Warp Light -虹の航跡-(第1話)
序
友達がいるってないいもんだよな、とピーター・アレンは独りごちる。たとえ彼らが、越えられぬ時空の彼方に去ったとしても、ここに来ればいつでも、共に在った日々を思い出すことが出来る。 アンドロメダ星雲の中心付近に位置するミノス恒星系第4惑星ハーナスの、いつものラウンジ・バーの窓際のいつもの席に、今日は1人で座っているアレンだが、その前に来た時は4人連れの中にいた。 ダークブラウンの髪に緑色の瞳がコケティッシュなシーサリア人の美少女ミディと、2人揃うとジョークの応酬が五月蝿いほどだったトム・パリスとハリー・キム。 殊に根っからのフライボーイ、パイロットだというトムとは妙に馬が合い、多くの時間を共に過ごした。あの2人は無事、彼らの母艦だというU.S.S.ヴォイジャーに戻れただろうか? 彼らの故郷アルファ宙域から7万光年離れた、デルタ象限を彷徨う艦にもかかわらず、故郷でなく母艦に戻れなければ意味がないと彼らは考えていた。アレンにはその思いがよく分かる。そして、そんな彼らの1人に淡い想いを抱いていたはずのミディは…。 彼女の魂もやはり、彼らと共に在るのだろう。 「なんだなんだアレン、誰かの葬式でもあったみたいな顔じゃないか?」 ワレガネのような大声に振り向くと予想通り、緑の肌も鮮やかなフィルモア人が、大袈裟に腕をヒラヒラさせながら近付いて来るところだ。当然のようにアレンの向かいの席に座り、間髪入れずに近づいたウェイターに目配せだけで注文を伝える。 「縁起でもない、彼らは死んじゃいないさ。きっと今頃はヴォイジャーに無事戻ってる。」 「トムとハリーか!」 フィルモア人が破顔した。 「何とも楽しい連中だったなぁ。いつかまた、会えるといいが…。そうだ、今夜は連中に乾杯しよう!」 「OK、トムとハリーに。」 運ばれて来たいつものソルティ・ドックをかかげ、盛大にウィンクして見せるロイズに調子を合わせて、アレンも飲みかけの、こちらもいつものパラノイア・ブランデーのグラスを掲げてから一口啜った。とたんに、初めてこの酒を口にした時のハリー・キムの表情が甦って、アレンの顔もほころぶ。 ピーター・アレンがトムとハリーの二人に出会ったのは、今からちょうど1年前、このラウンジ・バーでのことだった。
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