disclaimer: トムやハリーや他のヴォイジャーのキャラクターはパラマウントのものです。この小説には著作権侵害の意図はありません。個人的に楽しんでいるだけです。
Warp Light -虹の航跡-(第4話)
「…もう一度確認しよう。君達は24世紀の地球生まれで、惑星連邦という組織に属する宇宙艦隊仕官、パリス中尉とキム少尉だと言うんだな?」
 食後のカフェ・オ・レを片手に、ロイズ氏のデスクに寄りかかったポーズで尋ねるアレンに、神妙な顔で頷いているのはハリー・キムだけで、パリスはどこか心ここに在らずな様子でマグカップを見つめている。
「その話が本当だとすればだが、君達はとんでもないアクシデントに見舞われたことになるな。」
 と、アレンがカフェ・オ・レを一口啜り、
「この世界は31世紀の未来、西暦で言えば3000年代に当たるが、過去の歴史のどこにも、惑星連邦という組織が存在したと言う記録はない。」
 と締めくくった。
 ハリー・キムが息を呑み、その隣でトム・パリスはゆっくりとカップの中身を飲み干した。
「ここがアンドロメダ星雲の中だって聞いた時から、何となく予想はついてたよなあ、ハリー。」
 パリスに背中を思い切りどつかれても、キムは黙りこくったままだ。
「…悪かったよ。全部、俺のせいだ。」
 そう吐き捨てたパリスをキムが睨み付け、2人は背中を向け合ってしまった。
「ゆうべトムが言ってた、暗黒星雲とやらのことか?」
 アレンが水を向けると、今度はトムが頷く。
「HN2+イオンがベストな割合の星雲だったんで、星の赤ちゃんがたくさん生まれて面白そうだと思ってさ。コイツは真面目に、真っ直ぐ帰ろうって言ってたのに無理やり寄り道しちまったんだよ。そしたら星雲に入ったとたん強烈な電磁波でシャトルが操縦不能。そのまま大波に浚われるみたいに翻弄されたもんで俺たちも意識を失って…。気が付いたら巨大な貨物船にシャトルごと拾われてた。」
「そしてその貨物船のターミナル港が、このハーナスだったって訳だな?」
「そりゃあ大冒険じゃないかお二人さん!」
「それどころの話じゃないぞロイズ! 自分の世界から切り離されて、戻れるかどうかも分からんってのに…。」
 無神経なフィルモア人の大声にアレンがやり返す間に、背を向け合っていた2人のキムの方が身体の向きを変え、パリスの肩に手を掛けている。
「トム一人の責任な訳ないだろ? 結局僕だって君の話に乗ったんだし、パラレル宇宙に飛ばされる羽目になるなんて、誰にも予想出来なかったよ。」
「…何でだよ?」
「え?」
「…何でお前はいつも…。」
 言いながらふと目を上げたパリスは、こちらを見つめるアレンとしっかり目線を合わせてしまった。
 ハリーはいい子ちゃんじゃなくて…。
「…いや。イジケてごめんって言いたかったんだ。いつものことだけどな。
 一緒に帰る方法探そうぜ。どうやらこの人達が手伝ってくれるみたいだし。」
「僕たちいつも悪運だけは、強いみたいだもんね。」
「さぁ、それはどうかな、ハリー。」
 ピーター・アレンが、トム・パリスそっくりの悪戯っぽい青い眼で微笑んでいた。


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